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ついこの間、近所のしょうもないお好み焼き屋に食いに行ったところ、後ろの席にいた若い連中の話が耳に入ってきた。それは3人組の男で、どうやら映画の話をしているようだった。
「パイレーツオブカリビアンめちゃめちゃおもろいでー!」
「ああ、あれは最高におもろいな!ジョニーデップめちゃカッコええもんな!」
「そうそう!あれみてジョニーデップ好きになったってみんな言いよんもん!」
「ジョニーデップの映画の中で一番イイよな!」
とかなんとか、台詞にいちいちエクスクラメーションマークが付くような鼻息の荒さで、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』と主演のジョニー・デップを約10分間に渡って延々と絶賛し合っておったのだが、それは一体どういうことなのか。
パイレーツ・オブ・カリビアン〜呪われた海賊たち。2、3年前に公開され、いわゆるハリウッド大作を受けないことで知られるジョニー・デップが主演したことでも話題となった、ディズニー配給の冒険・海賊活劇である。この時、集まった人間全員がそのパイレーツ・オブ・カリビアンをメロメロの手放しでブリブリに褒めちぎっておったのだが、この映画をここまで持ち上げる意見をオレは初めて聞いた。無論、それが変だとか悪趣味だとか言っているのではない。映画の良し悪しの判断なんてのは個人的なものだし、当時は実際にかなりヒットもしたはずだ。まあオレには、やたらと金だけかかった予定調和なB級ベタ映画としか思えなかったが。
しかし、老若男女あらゆる層をターゲットにする大作というものには、その作りに「わかりやすさ」が求められることは理解できるし、その「わかりやすさの訴求」と、監督を含めた映画職人達が表現したい(しばしば難解であるかもしれない)彼等流の演出アプローチとの間のジレンマに苦悩しながら制作に身を費やしているのであろうことは想像できる。なんて考えて監督を調べてみた。その名もゴア・バービンスキー。誰やそれ。はあ、アメリカ版リングの監督ですか。うむ。何を言わんかや。
そんなことよりも引っかかったのは、後ろの野郎共が言う、これと→「あれ観てジョニーデップ好きになったってみんな言いよんもん!」、これだ→「ジョニーデップの映画の中で一番イイよな!」
「みんな」というのは野郎共の周りの人間のことだろうが、この映画を観て、じょにーカコイイ!好き!とテンパるような人間は、彼の映画の何を一体観てきたのか。そして、一番イイ!とはまたどういう意味なのか。確かにジョニー・デップは、ホモっ気ゼロのはずのオレが濡れるほどにイカす役者だが、彼が男前だった映画とはエドウッドであり、デッドマンであり、フェイクであり、ブロウだ。
ジョニデプはパイレーツでも印象的な演技を披露してはいたが、何と言うかこう(役作りではなく)脱力した感じとでも言おうか。端から「ディズニー制作のホリデー大作」だと諦め、舐めた風で。全く、これでアカデミー主演男優賞ノミネートとは、アカデミー会員の眼は節穴か。ってそれこそが個人的な趣味・見解とゆうやつですね、だうもすいやせん。ただ、彼らとオレが映画談義を楽しむことは出来なさそうだということがわかっていただけるだろうか。
しかし何というか、他人の感性というか、センス的なものを頭ごなしに否定し馬鹿にするなんてのは、それこそ愚の骨頂だとは思うが、相容れない趣味嗜好を押し付けられるのもたまったものではない。昔、ちょっとイイなと思っていた女の子と初めてマンツーマンで会った時、「君の好きなものって何なの?」というようなことを尋ねたところ、「JリーグとB'Zが大好きな女の子です!」と声高らかに即答された。それで一気に収縮し、何もかもやる気がなくなった記憶がある。いや、オレもサッカー観戦は好きだし、B'Zも聴いてみると良いのかもしれない。だが「大好きな女の子DEATH!」という言い回しがまず癇に障り、更にその後延々ガンバのツネ様とB'Zの素敵さについて語られたもんだからもうね、このねーちゃんイイじゃんイイじゃんたまんねーじゃんと思っていたのはどこへやら、てなもんですわ。
「マイナーだからおもしろい」というテーゼがクセ者である。「マイナーでおもしろい」ものもあるが「マイナーでもつまらない」ものや「メジャーでもおもしろい」ものもある。とは、故・ナンシー関の含蓄ある金言だが、言い換えれば「メジャーでおもしろくない」ものも当然ながら歴然として存在するのだ。
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