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spring rain
by MURAKAMI YUICHIRO 15.APR.2006

最近、とっても面倒な体験をしたので記録しておこうと思う。見知らぬおっさんなんぞの個人体験なんかどーだっていいんだよボケ、とかミもフタもないことは言わない。 単に他人の原付バイクの廃車手続きをしただけの話なのだが、これがけっこう悲惨でして。

まず、3月に最初の連絡があった。「ムラちゃん、原チャ廃車にしといてくんない?」 それはネオ東京に棲まうEXガールフレンドからのmixi(笑)を介してのメールで、というのも、オレはその彼女から笑えるくらい糞ぼれえ原付を借りていたのだけれども、自賠責が切れるのでもう捨てちゃってちょうだいということだった。
めんどくせーなーでもまあオレが預かってるんだもんね、本人は京都にいないもんね、西京区役所微妙に遠いけどね、しゃーないね、てな感じに引き受けた。期限は4月10日。 ぶーぶー言わずにさらっと動いてやろうなんて一切思わない。生憎オレは極度の面倒くさがりで、しかも底意地が滅法悪い。だから後述のように時々仏罰が下される。

そして4月7日夜、「10日までやで、憶えてる?」なんて連絡が再び。ふふ、忘れてた。そんなもん遥か忘却の彼方でした。 8、9日は土日なので、役所はお休み。もう10日当日に行くしかない。と、4月10日月曜日、その日の京都は冷たい雨が降りしきる、とても寒い日だった。まじでー。そしてオレのコンディションはというと、37度プラスαの微熱を伴う風邪っぴき。間、悪し。

死に逝く原付の持主である彼女曰く、廃車にはナンバープレートを提出するだけでOKとのことだったが、名義人以外の人間が行ってもそれでよかなのだろうか。少し気になってお役所に問い合わせてみた。すると、「代理人による場合は名義人の書いた委任状が要る」とのご返答。うそーん。慌てて東京に連絡を入れ、委任状をFAXで送ってもらうことに。ただし、朱肉で押したハンコが必要らしいので、名義人の姓である「森田」の印鑑をこっちで用意しなければならない。段取り悪し。でもま、印鑑なら100円ショップとかで売ってるだろうし。

とりあえず、足のないオレは友達にバイクを借りることにした。自宅アパートである中京区壬生から、清水寺近くの陶器屋で働くそいつの店まで市バスで移動。バス内は溢れかえるジジババでどえらい混雑。うぜえ。両耳補聴器着用のよれたじいさんに、道中何度もぐりぐり足を踏まれた。「あのーボクの足踏んでます」「えー(大声)?」補聴器意味なし。

京都市バス名物の乱暴運転に揺られること約30分、バイクをゲットすることのできたオレは、廃車する原付が置いてある上京区の御所付近にまでナンバープレートを取りに走る。全く乗っていなかったので、そんなとこに置きっぱなしだったわけ。雨は小降りにすらならない。うぜえ。ジーパンは既に脱水前の洗濯物状態だし、防水スプレーを死ぬほどぶっかけたはずのウィンドブレーカーにもばずばずと水が染み始める。防水スプレー意味なし。 そんなにびしょびしょでも懐のMDウォークマンは稼動。流るる音はBoards of Canada。ゆる〜いエレクトロニカに益々滅入る。って今日びMDって。もうどうでもいい、つぶれるならつぶれてしまえ。

さてお次は印鑑だね、と、そこいらの100均に行ってみるが肝心の「森田」がない。森田挿すとこ2つあるのに。ま、100均なんてどこにでもあるさ。ずぶ濡れになりながら次の店に。 ない。でも森田はやっぱり2つ分あるんだよねー、でも両方ないんだよねー。森田さん人口多いんだろうねー。とかぶつぶつ言いながら次の店に。 うわーここもなーい。森田のポジション両方にはなぜか「森脇」がはまっている。なんかよけと腹立つわ。つーかものすごい濡れてただでさえ鬱だってのに。うーん神様のいじわる。

いっそハンコ屋にでも行ってやろうかと思うものの、ハンコ屋なんてどこにあるのか知らんしね。とりあえず森脇健児に殺意を覚えながら次の店に。 わー。あったーありましたー。実に100円ショップ4軒目にして、ムラちゃんは森田判を手に入れた。ムラちゃんはニフラムをおぼえた。 全く無駄に労力を使わせやがるナリよ。とはいえ、ようやく委任状に判が押せた。これでアイテムコンプリートだ。よし、それでは改めて区役所に向かおう。

ところで、バイクにまたがった五条坂からナンバー入手のための上京区を経由して西京区役所、というルートは15キロくらいあるだろうか。最短のその距離でも、半ヘルバイクwithヘヴィレインwithout撥水服にとってはけっこうなもんなのに、小一時間以上もハンコジプシーと化してあちこちをうろちょろしていたため、既に本気低体温症気味のオレ。一向に止む気配のない高密度霧雨の中、震えが全く止まりません。嗚呼、顔面が痛い。とめどなく流れ出る鼻水をぬぐう気力も失せた。全身のみならず、心までびちょびちょでございます。

そしてようやく到着いたしました、京都西京区桂は西京区役所。ぐっちょぐちょのべっしょべしょの状態で市民税課に行く。応対したおっさんは一瞬ぎくりとした様子だったが、手続きは全くあっさりしたもので、ものの2分で区役所に用事はなくなった。そんなことよりもここから再び五条坂まで帰らなければならない。その距離は7、8キロ程度だが、このあらゆる意味でのバッドコンディション下では果てなくにも感じられ、鬱。 気温以上に寒く感じるおんもに文字通りよれよれと出で、熱を帯びたマフラーから雨水が蒸発する湯気を上げる70ccダックスにまたがる。そりゃほんといやいやに。

曇って見づらいサングラス越しに映るその光景は、風情もへったくれもないコンクリート色の寒々しい国道沿いの街並。遠く東の突き当たりには、東山の深緑がガスの中に薄ぼんやりと霞む。目的地はあそこの麓。それはもう果てしなく見えて永遠で。 細かく密集した雨粒は時折りばらばらと大きなものも交え、際限なく全身に降り注いでオレの体力と体温、そしてエナジーを霧散させるかのごとく瞬時に奪ってゆく。嗚呼、咳ががほがほと止まらない。呼吸の度に咽喉がひゅうと鳴る。今ならネコと闘っても素で負けそうです。

その時だった。ぶすすん。ガス欠。うっひょーまじでー。ワタファッキンバッドラック。これは何だ、仏罰か。駄目だ、負の気、ネガのオーラに飲み込まれてしまう。 普段なら軽いはずのダックスが、その時はVマックスほどの重さにも感じられ、時速1キロにも満たない速度でずるずると引きずりながらガソリンスタンドを捜し求める。そんなオレの姿はきっとまるで屍のようで。

その日の夜、いい年こいて39度に達する高熱を発した屋根裏の散歩者は、まるまる2日間寝込むハメに陥った。そして今回この日に得たものは、もう一生使うこともないであろう「森田」の印鑑だけなのだった。





















































































 
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